• Memorial Archives
  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。
  • HOME
  • 記事
  • Memorial Archives
  • 野鳥と私たちの暮らし 第27回 ライチョウ(3)卵を差控え中央アルプスにライチョウを復活させる試み

野鳥と私たちの暮らし 第27回 ライチョウ(3)卵を差控え中央アルプスにライチョウを復活させる試み

有性卵と差し替える試み

 白山で実施できなかったことをこの機会に中央アルプスで実施することで、中央アルプスにライチョウを復活させることはできないだろうか?北岳山荘でのケージ保護終了後、雌が飛来した中央アルプス駒ケ岳を訪れ、ライチョウの棲める環境が十分あることを確認した私は、環境省の福田さんにあるアイデアを持ちかけました。

 それは、飛来雌が次の年も無精卵を産んだら、その無精卵を隣の乗鞍岳から採集した有性卵とこっそり入れ替えることで、雛を孵化させるというものでした。私は、30代から50代にかけての25年間、カッコウの托卵行動を研究しています。その研究成果を生かし、カッコウが托卵する行動を真似るという作戦です。

 福田さんの理解が得られ、環境省として翌2019年に卵の差し替えを試みることになりました。幸いなことに、翌年の2019年にも飛来雌は無事に生き残り、8個の卵を産みました(写真上:2019年に飛来雌が産んだ8個の無精)。

 この8個の無精卵と差し替えるのは、乗鞍岳から採集したまだ抱卵が始まっていない産卵中の巣から採集した卵です。抱卵が始まっていない卵でしたら、差し替えてから22日目に雛は一斉に孵化します。採集する卵は、1巣から2卵までと決めていたのですが、飛来雌が抱卵を開始した日までに発見できていた巣は2つのみでした。そのため、これら2巣からそれぞれ3卵採集することに、急遽予定を変更しました。

 乗鞍岳で6月8日に採集された抱卵開始前の6卵は、車で中央アルプスのしらび平駅まで運んだ後、駒ケ岳ロープウエイで千畳敷駅まで運び、以後は徒歩で飛来雌の巣のある場所まで運び、この日の夕方に巣の中の8個の無精卵が取り除かれ、代わりに6個の有精卵に差し替えが実施されました。

 幸いなことに、卵を差し替えたことに雌は気づかずに抱卵を続け、22日後に6羽の雛は無事孵化しました。雛を孵化させることに成功したのです。しかし、残念なことに10日後にはすべての雛が失われ、初年度の試みは失敗に終わりました。

続きを読む
2 / 3

関連記事一覧