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大石 芳野さん(報道写真家)
大石芳野さんは報道写真家である。愛機のライカを片手に、世界中の紛争、内乱の戦火に襲われる子どもたちに寄り添い、その悲劇を伝え続けるが、その活動のルーツは若き日、ベトナムで出会った戦争に怯える子どもたちの瞳の中にあった。現在もフォトジャーナリズムを深化させ続ける義人の十代と哲学を訊いた。
報道写真の世界へのきっかけは
大学生のときベトナムに行ったんです。私が訪越した1966年当時のベトナムは、北爆(ベトナム戦争でアメリカ軍が行った北ベトナムへの爆撃)の戦火の真っただ中でね、ベトナム人の反戦活動も盛んだった。そんな渦中に日本の一学生がカメラを持って漠然と赴いたわけだけど、そこで強い衝撃を受けたんですね。
特に印象的だったのは、戦争の暗さを象徴するように悲し気な表情を湛える子供たちだった。戦争に曇らされた子どもたちの暗い瞳に向き合ううちに、「自分もただ漫然と写真を通して社会と繋がるだけに満足してはいけない、明確な社会意識を持つ写真家として生きていこう」と思うようになったんですね。
大学卒業と同時にフリーカメラマンに。これは当時女性には大変なことだと
そうですね、当時はどこも女性とみればまず雇ってくれなかったんですよ。そんな社会状況ですから、仕方なく他の仕事をする傍ら写真はライフワークで……、というような人も多かったと思います。でも、私はどうしても直接的に写真を仕事にしたくてね。師事した大学の教授も、「大石君、もうフリーになりなさい」なんて言うものですから(笑い)。
結局、良く分からないままフリーになったけど現実は凄く大変でしたよ。なにしろ男社会だから、なにをするにも一筋縄にはいかないんです。女性には受難の時代でしたね。それでも、「とにかく写真家として自立したい」という気持ちだけで挑戦を続けていました。