木原 実さん(俳優・気象予報士)
芝居で生きていくのは本当に難しい。星の数ほどの役者の中でも、それだけで食べられる人間はほとんどいない。諦める気は毛頭ないが、現実の厳しさは否応なく、毎日の生活にのしかかった。
そんなある日、役者仲間の一人に、もっと割の良い仕事もしなよ、と声優の仕事を薦められた。ラーメン屋のバイトよりもギャラもいいし、それで稼いで芝居やればいいじゃない――、そう言って、友人が紹介してくれたのが声優・神谷明さんだった。
友人の言葉通り、北斗の拳やキン肉マンで知られる大物声優の実績はやはり絶大で、付き人をする木原さんにも声優、リポーターなどの仕事がポツポツと入るようになった。
「テレビ局がお天気キャスターを探している。近くオーディションがある」そんな話を神谷さんから聞いたのもこの頃のことだ。「行っといで」柔和な顔に送り出されて踏み出したこの一歩が運命を変えることになる。
天気予報に命を吹き込む
1995年になり気象予報士制度が国家資格になり施行されると、すぐに周囲からは資格を取得するよう促された。その頃は、すでに天気予報をはじめて10年が経っていたし、自信はないことはなかった。とはいえそこは国家資格、簡単ではない。木原さんは、大学受験以来の試験勉強に懸命に取り組むと、見事合格。晴れて正式に気象予報士になった。
数少ない気象予報士はたちまち引っ張りだこになる。朝の生放送が週に4日、夕方の帯番組が週5日、目まぐるしく日々は過ぎてゆく。