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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの暮らし 第16回 小さな猛禽 モズ

 モズが何のためにはやにえを行うかについては、以前にははやにえの多くは食べられずに放置されることなどから、本能的な行動とされてきましたが、最近の研究から餌の少ない冬期の保存食という考えが有力になってきました。はやにえのほとんどは消費されていること、またはやにえの消費量は餌の少ない冬期に多いことが明らかになったからです。

 また、最近の大阪市立大学と北海道大学の共同研究から、はやにえの消費量の多かった雄ほど繁殖期の歌の質が高まり、つがい相手を獲得しやすくなることが明らかにされました。このことは、モズの雄のはやにえは「配偶者獲得で重要な歌の魅力を高めるための栄養源となっていることを示唆しています。

 以上のことから、モズの様々な特徴は、この鳥が肉食の小さな猛禽ということと密接に関係していたのです。

なかむら ひろし 1947年長野生まれ。京都大学大学院博士課程修了。理学博士。信州大学教育学部助手、助教授を経て1992年より教授。専門は鳥類生態学。主な研究はカッコウの生態と進化に関する研究、ライチョウの生態に関する研究など。日本鳥学会元会長。2012年に信州大学を退職。名誉教授。現在は一般財団法人「中村浩志国際鳥類研究所」代表理事。著書に『ライチョウを絶滅から守る!』など。

(モルゲンWEB)

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