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蓮見孝之さん(TBSテレビ アナウンサー)

テレビの世界へ

「なぜ入れたんでしょう?」そう尋ねると、「私が聞きたいですよ」と頭をかいた。ただ、学生時代、飛び込みで参加したTBSの人気番組『ウンナンのホントコ』、Jリーグのスタジアムアナウンサー体験。そうして体当たりで経験したことが、自信と実績に繋がったかもしれない、と続ける。そして「実はアナウンサーの内定を貰った後も教育実習に行ったんですよ」と神妙な面持ちをした。

 テレビカメラに向かって話をする場合、液晶レンズの向こう側で話を聞く視聴者の表情は、想像の中にしか浮かばない。その点、学校の教師には、生徒たちの表情をじかに見ながら話しをできる楽しさがある。先日、ゲストティーチャーとして招かれ、改めて実感したときのことを熱っぽく語ると、「だから本当に迷いました」と深く息をついた。

 迷った末、選んだのは、針の穴を通す倍率を突破して掴んだアナウンサーの仕事。しかしもちろん、そこには様々の難しさがあった。例えば、ニュースに携わる現在は、仕事中に笑顔になる瞬間はほとんどないのだ。常に、人の生死に関わり続けるし、ときには犯罪者の家族にもマイクを向けることもある。

 道行く人への街頭インタビューも、やはり簡単ではない。ときには、話しをしたくない人達から言葉を引き出すことも必要なのだ。そんな場合、カメラを向けることも含めてどうしても難しくなることが多い。まして、事件被害の当事者と関わるのは、経験したものにしか分からない辛さがあった。それでも、(仮にその声が拾えなくても、その痛み、悲しみを代わりに届ける役割ができたら――)、そんな想いを胸に現場に立ち続けた。

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