「わたしのマンスリー日記」 第10回 「風にそよぐカーテン――『ありがとうMama』」

「ロックの女王」として知られるシンガーソングライターの白井貴子さんから1冊の本が届きました。『ありがとうMama』(カラーフィールド出版、2023年5月)。昨年、お父さん、お母さんを亡くし、さらに私と同じALSで病んでいた叔母さんを看送るという過酷な運命に直面しながらも、必死に介護した日々を描いたドキュメンタリーです。ロック歌手らしい率直でストレートな表現の中に、限りない愛と優しさが込められていて読む人の胸を打ちます。

 親を看送ることは誰も避けることのできない試練ですが、私たちはその悲しみを乗り越えて生きていかなくてはなりません。白井さんはエンジン01文化戦略会議の仲間の一人ですが、私がALSと闘っていることを知って送ってくれたものです。ありがとう! 以下はお礼の気持ちを込めた感想です。

白井貴子さん

『ありがとうMama』読了しました。読み終わって心に残ったのは言葉では言い尽くせない一種の「幸せ」感でした。月並みな「幸福」感ではなく、リアルで、一回しか体験できないけどずーっと心に浸みわたって残る、そんな「幸せ」感でした。
 そのことを白井さんは「悲しいだけの『さよなら』ではないんだ」と言い切っています。まさにその通りだと私も思います。私も20年前に母を送りました。郷里は長野県松本市で離れていて、介護は兄夫婦に任せきりで何もできなかったのですが、最期の日は共に過ごしました。それは「幸せ」なひと時でした。
 母は96歳で亡くなりましたので、天寿を全うしたと言っていいでしょう。自分を生み育ててくれた母、時には厳しく叱ってくれた母、そんな母が大好きでした。大好きな母と別れるのは辛い。
 私は前著『夢はつながる できることは必ずある!-ALSに勝つ!』(東京書籍、2022年)の冒頭で、五つの「命」について書きました。「宿命」「生命」「使命」「運命」「寿命」ですが、最後の「寿命」は命が尽きることを意味しています。この世の生きとし生ける全てのものに「寿命」がある。永遠に生き続けることはできない。誰もいつかX-Dayを迎える。それは人間に限らず、全ての生物に与えられた「宿命」なんですね。
 私は長野県松本市にある徳運寺という曹洞宗の寺院の次男坊として生まれ育ちました。葬儀は数十名の僧侶による荘厳なものでした。檀徒を始め関係者挙げてのお別れ会でしたが、それを私はただ受け入れるしかありませんでした。
 その時の思いを胸に思い浮かべながら、本を読ませてもらいました。共鳴した箇所、考えさせられた言葉についてコメントを添えました。お読みください。

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