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野鳥と私たちの暮らし 第27回 ライチョウ(3)卵を差控え中央アルプスにライチョウを復活させる試み

50年ぶりに飛来した雌

 2018年7月、ライチョウに関するビッグニュースがありました。ライチョウが絶滅した中央アルプスで、50年ぶりに雌のライチョウ1羽が登山者により発見されたのです。そのことが、地元の信濃毎日新聞に写真付きで掲載されました。

 そのことを南アルプスの北岳山荘にいた私に電話で知らせてくれたのは、当時環境省信越環境事務所でライチョウの担当をしていた福田真さんでした。私が数人の協力者と共に北岳山荘に泊まり込み、孵化したばかりのライチョウ家族を山荘近くに設置したケージに収容し、悪天候とキツネやテン、チョウゲンボウなどの捕食者から人の手で守るための「ケージ保護」活動に従事していた時のことです。

無精卵を産み続ける

 そのニュースを聞いて思い出したのは、2009年に同じくライチョウが絶滅した白山で70年ぶりに見つかった1羽の雌ライチョウのことでした。その年の秋、私は白山を訪れ、その雌について調査をしています。また、翌年の繁殖時期にも白山を訪れ、その雌の調査を行っています。さらに、地元の方の調査結果とも合わせ、私が知ったことは、ライチョウの雌は雄がいなくても繁殖時期になると巣を造り、卵を産み温めることでした。しかし、無精卵ですので、いくら温めても雛は孵化しません。最後に雌は卵を温めることを諦め、巣を放棄することでした。

 第11回ライチョウ会議石川大会を白山の麓の金沢市で開催した折、私はその基調講演の中で、これを機会に白山に他の山から雄を連れてくることで、白山にライチョウを復活させる提案をしました。しかし、地元の方の反対で、実現しませんでした。

 その雌は、その後8年間白山に生息していたのですが、その間無精卵を産み続け、ついに2016年を最後にいなくなったという苦い経験があります。

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