• 十代の地図帳
  • 青春の記憶に生きるヒントを訊くインタビュー記事

大石 芳野さん(報道写真家)

昨年(2012年当時)3.11がありましたね。どのようなお考えを

 あんな事件があったせいかはわかりませんが、今、日本人は凄く内向きになっている気がします。もう自分たちで精一杯だからほかのことは知らない! ってね。もしそうなら少し残念です。原発の問題に顕著ですが、幼い子たちや若い世代に特に影響のある放射性物質などの問題にも、相変わらず大人は無責任を貫いている。今、私は月に1度は福島を訪問して写真を撮りながら支援活動を続けていますが、そのときいつも、「弱き者がより被害者になるこの負の構図をなんとか大人みんなで覆すさなくては」というのを念頭において活動しています。弱きにしろ強きにしろ、等しく皆さんが問題意識を共有し、子供を、この国の未来を守ることを優先順位の1番上に置いて生きてくださることを切に願っています。

おおいし よしの 1944年東京都出身。日本大学芸術学部写真学科卒業。戦争、内乱後の市民、子どもたちに目をむけたドキュメンタリー作、ベトナム戦争、カンボジアの虐殺、スーダンのダルフの難民、原爆の広島の人々などを取材。人々の生活が戦争や紛争で妨げられて命を奪われている惨状を世界に伝えている。主な作品は1982年「無告の民」で日本写真家協会年度賞、2001年「ベトナム凛と」で土門拳賞、また1994年には芸術選奨新人賞、2007年紫綬褒章を授与。現在は日本大学芸術学部客員教授でもある。

写真:西場 誠志

(月刊MORGEN archives2012)

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