• 十代の地図帳
  • 青春の記憶に生きるヒントを訊くインタビュー記事

鎌滝 えりさん(女優)

 『子どもたちをよろしく』——虐待、性暴力、いじめ……、日本社会の闇にフォーカスし光を与える、邦画期待の問題作だ。主演は女優・鎌滝えりさん。家庭内暴力に孤立を深める主人公に、かつて不登校で社会に居場所を失った自分を重ねた、と吐露する。近年、経済至上主義は、その根をいっそう深め、社会のセーフティネットは網目を広げるばかり……、自分もこぼれ落ちた子どもだった—、今は明るく笑う俊英に十代を訊いた。

どんな少女でしたか

 小さいときはわりに活発な女の子で、それが年齢を重ねるにしたがって、段々と内向的になっていって。

小学校から不登校を

 何か凄く決定的な理由があってそうなった、というわけでもないんです。イジメや嫌がらせみたいなことも全然なくて……。それよりは、もっと家庭の些細なことや学校の中の色々の出来事が積み重なって、それが次第に集団行動という学校教育の核心に対する反発に繋がっていった。それは自分とは決定的に相いれない価値観で。

その頃の交友関係は

 そんな調子だったので、友達は、〝作れない〟のではなくて〝作らない〟(笑い)。こんなふうに今、話してると照れ臭いというか、恥ずかしいけど、「一人で生きていくぜ」と、大真面目に胸を張り、あえて孤独を選んでいました。マセていた、と言われればそうかもしれないけど、もしかすると、どこかマセたフリをしているところもあったかもしれないですね。

ご両親は心配などは

 それが、そういう心配を口にされたことは一切ないんです。「ちゃんと学校に行きなさい」みたいに言われたことは一度もない。本当に自由な家庭で、母はいつも柔らかい目で私を見てくれていた……。今、この仕事に就いて思うのは、あのころの内面の格闘が、とても役立っているということ、そして、それを暖かく見守ってくれた母が、もし、いなかったなら、今の私はないということです。そこは凄く感謝しています。

不登校に後悔は

 もちろん、学校に行かなかったのが全面的に良かったかと言えばそうじゃない。学ぶべきときに学ばなかったという思いはやっぱりあります。でもそれは、今お芝居をしていて、ふいに突き上げる学びの欲求となって生きてもいる……。ただ一つ、はっきりしているのは、あのとき母に、「無理にでも学校に行きなさい」と背中を突き飛ばされなかったのだけは、絶対にそれで良かったんだと思います。

不登校の間、家ではどんな過ごし方を

 その頃はもう、お芝居や映像の世界に強く惹かれていたんです。雑誌を切り抜いては、メイクやヘアー、スタイリングを、その切り抜きに想像したり、そうかと思えば詩や文を書いてみたり……。当時は、表舞台に立つのではなく、裏方になるのを夢見ていて、そんなことに時間を忘れて没頭していました。特別、この作品に影響されて、というようなきっかけがあったわけでもなくて、ごく自然にその世界の雰囲気に浸っていった感じですね。

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