• 十代の地図帳
  • 青春の記憶に生きるヒントを訊くインタビュー記事

上田 岳弘さん(作家)

『ニムロッド』――旧約聖書、創世記第10章に登場し、バベルの塔を発案する人物だ。作家・上田岳弘さんの芥川賞受賞作のタイトルだが、虚偽と幻想の狭間にそびえるバベルを人間、あるいは社会そのものに転移、本質を手探る作風は、各所で高い評価を受ける。新作『キュー』では、出版とITを組み合わせた壮大なプロジェクトに携わった。今を時めく文壇の風雲児に十代を訊いた。

兵庫県のお生まれですね

 そうですね、僕は4人兄弟の末っ子で。「末っ子」と言うと、よく「さぞ甘やかされて育ったでしょう」などと言われますが、うちはそもそも甘えさせてくれる家じゃなかったんです。それどころかもうほとんど放置で、誰も相手をしてくれない。というのも、うちは4人兄弟で、それぞれが2、3年の間を開けて7年の間に詰まっていたんです。そんな環境だから仕方なく上の子の遊びや動きを見ては真似していましたね。

その頃どんな遊びを

 とりたてて「これに夢中だった」というのはちょっと思い出せないけど、当時を思い返すと、とにかく蚊に刺されまくってる自分が浮かんできますね……。いわゆる「田舎」だった僕の街には神社や広場が多くあって、木や草が生い茂る薄暗い境内や草むらに沢山の虫たちが生息していた。その中を日が暮れるまで目いっぱい駆け回っていました。

その頃の読書は

 家には割に沢山の本があって、その中から姉や兄の本を手にとっては読んでいました。選ぶのは、専ら漫画や簡単な本ばかりでしたね。本格的に本を読みだしたのは大学になってからのことです。そんな風に割と小さい頃から活字には親しんでいましたね。

続きを読む
1 / 4

関連記事一覧