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菅谷 昭さん(医師、教育者)

いま若者に伝えたいこと②

 ただ誠に残念なのは、今の日本の問題は、こうした考えを大人が子どもに伝えたとして、聞く耳を持ってもらえないほど、大人の世界の現状が酷いということですね。政治ひとつ取ったって余りにお粗末で、ちょっと目も当てられたもんじゃない。経済も企業も、自分勝手な行いばかりが耳目を引いて、こういうことばかりが続くと、僕ら大人は立つ瀬がないですね。こういう状況はちょっと残念ですが、好転を期待して待っても仕方ないので、若者たちには、自分から動いて良い人を見つけなさい、と言いたいです。

 親は選べないけど、先生や師は自分で選べる。かつて私も東京の聖路加病院に師を求めましたが、その先生が「医のアート」というのを提唱していたんです。「キミね、素晴らしい絵や音楽ってあるだろう、ああいうモノって遠くても人は見にくるじゃないか、良いモノってそうなんだよ。キミたちもそういう医のプロフェッショナルを目指しなさい」という言葉をくれた。先生は、もうひとつ「患者の目線に立った医療をしなさい」とも言われて、それは今も僕の心の真ん中にあります。 若い皆さんにも是非、そういう良い出会いを持って欲しいと思いますね。

すげのや あきら 1943年長野生まれ。信州大学医学部卒。医学博士(甲状腺専門)。1991年より、チェルノブイリ原発事故被災地の医療支援活動に参加し、現地を7回訪問。1995年末に信州大学医学部第二外科助教授を退官。翌年1月からボランティアでベラルーシに単身滞在。5年半にわたり、首都ミンスクにある国立甲状腺センターがんセンターとゴメリ市の州立がんセンターで甲状腺がんにかかった子どもたちの治療にあたった。帰国後、長野県衛生部長を経て2004年から松本市長。現在、松本大学学長。

(月刊MORGEN archives2021)

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