『「先生が忙しすぎる」をあきらめない 半径3mからの本気の学校改善』

妹尾 昌俊/著

教育開発研究所/刊

本体2000円(税別)

それって、本当に子どもたちのため!?

「一生懸命にやって当たり前、もっと頑張れるはず」「よりよいものを求め、時間をかけることは、教師なら当然である」「多少大変でも、子どもたちの成長を実感できることは、教師としての自尊心を高め、充実感や達成感を味わえる、やりがいのある仕事である」

 本書を読むまでは、このような教師としての信念に、疑いを抱いていなかった。ところが、子どもたちに善かれと「ビルド&ビルド」してきた教師の取り組みの「事実」 や「そのわけ」を示されるにつれ、「本当に子どもたちのためなのか」と自問自答せずにはいられなくなった。頑張る教師として取り組んでいる自分の姿に自己満足しているだけだったのではないか。改善が進まない要因として突き付けられた「学校にあふれる善意」 の数々が、教師の心にズキリと刺さる。

 本書は、まず、教師の勤務実態の「データ」を細かに挙げ、そこから見える問題点を明確にしている。次に、改善できない理由と対比しながら、月指す「ビジョン」を示し、最後に、具体的で実現可能な「提案」をしてくれる。スローガンや絵空事ではなく、実際に改善可能な内容を示唆してくれている分かり易い学校改善の手引き書である。

 また、教師としての生き方を見つめ直す上でも有効な書である。「本当に子どものためなのか」、頁をめくる度に自分の指導観が揺さぶられる。「教育は『人』なり」。教師として生きる前に、一人の人問として魅力的なのか。心からの笑顔で、溌刺として子どもたちの前に立てているのか。どの頁からも、そう間われているように感じるのだ。

(評・福島県西郷村教墓員会学校教育専門指導員 安田 和典)

(月刊MORGEN archives2017)

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