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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。
フクロウ

野鳥と私たちの暮らし第3回 森の賢者 フクロウ

不足する繁殖のための樹洞

 調査を進める中で、繁殖に適した自然の樹洞の不足が深刻なことも解ってきました。他の地域では、スギの木の根元の地上に営巣した例やオオタカ、ノスリといった猛禽の古巣で繁殖する例が見つかっています。

 崖の穴に営巣した巣では、雛が2回、巣から落ちる事件が起きました。その都度巣に戻してやり、なんとか雛は無事巣立ちました。また、ハチクマの巣にカメラを設置していたら、その巣にフクロウが営巣し、雛が2羽とも巣から落ちてしまったことがありました。本来樹洞で育てられるフクロウの雛には、巣から落ちないようにする習性が備わっていなかったのです。

里山環境で人と共存してきた鳥

 フクロウは、人里に棲み、長い間人と共存してきた鳥です。神社の境内にある大木の洞にも営巣し、農耕地などの開けた環境でノネズミなどを捕らえる益鳥でした。暗闇でも見える人にない能力を持ちます。木に直立してとまり、人と同じような大きな頭と丸い平たい顔に立体視可能な丸い目を持ち、いかにも賢そうに見えます。これらの特徴は、いずれも闇の中で聴覚と視覚を頼りに獲物を捕らえるために進化したものです。

 身近に見られ賢そうな顔をしたフクロウの仲間の鳥ほど、世界中の人々に愛されてきた鳥はいません。古代ギリシャの知恵の神アテネの象徴として、神話や伝説、物語といった多くの文学作品や絵画の題材となり、逆に災いをもたらす不吉な鳥ともなってきました。

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