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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの暮らし 第25回 人を恐れない日本のライチョウ

 今回から3回にわたり、国の特別天然記念物で、近い将来絶滅の可能性の高い絶滅危惧種に指定されているライチョウ(写真上:冬羽のライチョウ雌・下:繁殖羽のライチョウ雌雄)についてご紹介したいと思います。ライチョウは、私が信州大学の学生のころから同大学を退職した現在も含め、私が最も長い間研究してきた鳥です。現在も年間100日間ほど山の上でこの鳥の調査と保護活動にかかわっています。

 今回はライチョウとはどんな鳥かを紹介し、2回目はその現状と課題にふれた後、3回目は現在実施している絶滅した中央アルプスにライチョウを復活させる事業についてご紹介します。

世界最南端に分布する集団

 ライチョウは、日本だけでなく北極を取り巻く北半球北部に広く分布する鳥です。鳥の中では最も寒い環境に適応した鳥の1種です。日本では本州中部の高山に生息しますが、日本のライチョウは、世界最南端の地にポツンと分布し、北の大集団とは完全に隔離された集団です。

 北の集団はツンドラなどの平地に棲むのに対し、日本のライチョウは高山に棲むのが特徴です。世界最南端の地で高山に棲む日本のライチョウは、大変貴重な集団であることから、国の特別天然記念物に指定されています。

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