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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。
フクロウ

野鳥と私たちの暮らし第3回 森の賢者 フクロウ

薄れる身近な自然への関心

 フクロウの研究から見えてきたことは、かつての人との共存関係が、最近ではすっかり壊れてしまっていることでした。巣の洞のある森の木は知らずに切り倒され、神社の洞の巣穴はコンクリートで埋められました。それらの結果、フクロウは姿を消し、神社で子供たちの遊ぶ姿も見られなくなり、そこで行なわれていた春祭り、夏祭り、秋祭りも、今では途絶えがちとなりました。

 これらの変化の根底には、かつての自然と共存した生き方から最近の人間中心の生き方への生活様式の変化があるように思います。我々は身近な自然を失っただけでなく、最近は身近な自然への関心も薄れてきてしまったように思います。物質的な豊かさと引き換えに、我々は多くの大切なものを失ってしまったように思えてなりません。

なかむら ひろし 1947年長野生まれ。京都大学大学院博士課程修了。理学博士。信州大学教育学部助手、助教授を経て1992年より教授。専門は鳥類生態学。主な研究はカッコウの生態と進化に関する研究、ライチョウの生態に関する研究など。日本鳥学会元会長。2012年に信州大学を退職。名誉教授。現在は一般財団法人「中村浩志国際鳥類研究所」代表理事。著書に『ライチョウを絶滅から守る!』など。

(モルゲンWEB)

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