• Memorial Archives
  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの暮らし 第9回 『人の生活に密着し、したたかに生きる鷹 トビ』

最も身近な鷹

 トビは「とんび」とも言われて親しまれており、日本では最も身近な鷹といってよいでしょう。体重は1Kgほど、翼を広げると150~160㎝にもなる大型の鷹です(写真上・翼を広げて旋回するトビ)。最近では都市部にも進出し、ほぼ全国に周年生息しています。ほとんど羽ばたかずに尾羽で巧みに舵をとり、上昇気流を利用して輪を描いて飛び、「ピーヒョロロー」と独特な声で鳴きます。「飛べ飛べとんび、空高く」ではじまる文部省唱歌の『とんび』や「とんびがくるりと輪を描いた」と歌われる三橋美智也の『夕焼けとんび』は、年配の方には懐かしい思い出の歌です。

優れた視覚

 トビが輪を描いて上空を飛んでいるのは、地上にいる餌を探しているのです。このトビがいかに優れた視力を持っているかに驚かされた子供の頃の体験があります。家で飼っていたウサギが子供を産み、その直後にそのうちの1頭が死にました。まだ、目も開かず、毛も生えていない赤子で、庭先の畑に捨てられました。その捨てられた子供が、舞い降りてきた大きな鳥によって目の前でさっと持ち去られたのです。一緒に目撃した母親が、「とんび」と叫びました。ウサギの赤子は数センチの大きさです。それを上空から見つけたのです。この鳥がいかに目が良いかを母親がしきりに感心していたのを今でも覚えています。

続きを読む
1 / 4

関連記事一覧