• 十代の地図帳
  • 青春の記憶に生きるヒントを訊くインタビュー記事

羽田 圭介さん(小説家)

 小説家・羽田圭介さん。高校時代に小説を書き始めると、17歳で文芸賞を受賞。その後、受賞する芥川賞では人気芸人・又吉直樹さんとのW受賞が話題になるも、端正な顔立ちとユニークなキャラクターで一躍お茶の間の人気者となった。

 現在も精力的に活動を続ける俊英の十代の地図を開いた。

どんな少年時代を

 特に活発というか、なんにでも真剣という子供ではなかったですね。中学受験をして大学の付属校に入ったので、よほど悪さをするとか、極端に成績が悪いというのでなければ大学進学は保障されていました。ですから、勉強もそれほど真剣には取り組んでいなくて。

 部活動は軟式テニス部でしたが、御茶ノ水にあった学校は校庭が狭く、テニスコートも2面しかないこじんまりしたもの。それをいくつかの部活で共有するので、練習できるのは、水曜と土
曜日だけ。皇居の周りをランニングする毎日でした。

小さい頃の読書体験は

  児童文学には興味はありませんでした。あれは子どもが読むものでしょ、なんて斜に構えて。自分も子どもなのにね(笑い)。

 小学5年の時に、親から中学受験を勧められて勉強を始めたんです。それで当時、埼玉の一軒家の2階にあった自室に篭もり、勉強机に向かうんですが、やっぱり勉強なんてしたくないわけですよ。

 机に広げた参考書の上に『鉄道員』『少年H』など流行り小説を重ね、親の目を盗んでは読んでいました。母の足音が聞こえるとすぐに隠して参考書に向かってね(笑い)。

 勉強するぐらいなら本を読むほうがマシ、という 割と消極的なスタートでしたね。

中学時代の読書事情は

 埼玉の家から東京の学校に通うわけですが、なにしろ通学時間が長いんです。毎日たっぷり往復2時間の暇をどう潰そう……、じゃあ本でも読むかとなって。

 中学になると読書スピードも速くなって、普通の本屋では追いつかなくなった。それで、当時頻繁に見かけた古本屋のワゴンセールをよく漁りました。その頃は少し背伸びしたい気持ちもあって『白鯨』や『罪と罰』などの古典小説を読んでいました。

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