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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの暮らし 第15回 極楽に棲む鳥 サンコウチョウ

薄暗い林を好む

 本州には4月後半から5月初めに渡って来て、平地から低山のうっそうとした薄暗い林に棲み、スギ林やヒノキ林のあるような環境が特に好まれます。巣は、林の樹冠部にあたる比較的高く、周りに開けた空間のある細い木の又に造ります。下向きの円錐形をした小さな巣で、スギの樹皮などを使ってカップ状の深い巣が造られ、巣の表面にはウメノキゴケなどをクモの糸を張りつけて、巣が目立たないようにしています。

短い繁殖期間

 5月から7月にかけて3~5個の卵を産み、雌雄交代で13日間ほど抱卵します。雛が孵化すると雌雄で昆虫やクモなどの餌を巣に運び、雛はふ化から10日間ほどで巣立ちます。巣造りから雛の巣立ちまでわずか1ヶ月間ほどで、他の鳥に比べると繁殖期間が短いという特徴があります。これは短期間に子育てすることで、捕食を回避するためと考えられます。繁殖に途中で失敗した場合には、再度巣造りをして再繁殖を試みます。

尾の長さで雌にアッピール

 ところで、サンコウチョウの雄は、なぜこんなにも長い尾をしているのでしょうか?生きてゆくためだけなら、こんな長い尾は明らかに生存に不利です。にもかかわらず、雄がこんな長い尾を持っているのは、雌を得るのに有利だからなのです。そのことを、雄の尾を切って短くし、逆に継ぎ足して長くする実験により確かめられています。尾を長くした雄ほど雌を得る確率が高まり、短くした雄は低くなることが確かめられました。雌が尾の長い雄を好むという選択を長い間続けてきた結果、雄の長い尾が進化したと考えられるのです。

近年の数の減少

 古くから日本人にとって身近でなじみの鳥であったサンコウチョウも、近年は個体数の減少が懸念されています。埼玉県東松山市でサンコウチョウを研究された内田博さんによると、1972年当時には調査地内の林地に19のなわばりがあったのですが、それから20年以上が経過した1995年には0になったことを報告しています(内田 1996 )。

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