『あせらず あわてず あるがまま 子育てに活かす仏さまのこころ』

大平 光代・友久 久雄/著

本願寺出版社/刊

本体1,000円(税別)

いまここで″あるがまま″でいい

 読み進めるほどに温かく癒される本である。実際にお目にかかったわけでないのに、お二人に受け入れられている気持ちになってくる、そんな対談集だ。

 本の中で対談しているのは、児童精神科医の友久久雄さんと弁護士の大平光代さん。大平さんがご自身の波乱の半生を描いた『だから、あなたも生き抜いて』はベストセラーになっているから読んだ人も多いだろう(かくいう私もその一人)。対する友久さんは、多くの親子が遠方からカウンセリングや発達援助を受けるために訪ねるお医者さんである。この二人には、中央仏教学院(京都)の通信課程で仏教を学んだという共通点がある。

 大平さんはダウン症の娘さんを出産されたあと、仕事の依頼をすべてキャンセルし、子育てに専念されたそうだ。娘さんの障がいをすんなり受け入れられたのも、子育てに専念すると決められたのも「仏教を学んだからだと思う」と言われている。そして「障がいをもつ子どものお母さんたちが元気になれるように」という思いからこの本を作りたいと考えたんだそうだ。

 本書はその言葉の通り元気がもらえる本である。

「自分の努力でどうにかなること、ならないことがあって、ならないことの方が世の中には多い。だから親も子も努力とか精神力とかをむやみに強調しない方がいい」

 本文にあるそんな言葉に肩の力が抜けた。このほかにも仏教に基づいた優しい言葉が一杯につまっている。

 本のサイズも文字の大きさも、子育て真っ最中の忙しいお母さんが手に取りやすいサイズになっている。そんなところにも細かな配慮を感じた。

(評・栃木県鹿沼市立北押原中学校 教諭 清水 美智子)

(月刊MORGEN archives2015)

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