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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの暮らし 第28回 ライチョウ(4)中央アルプスライチョウ復活作戦

 2018年7月、ライチョウが絶滅した中央アルプスに50年ぶりに1羽の雌が飛来しました。それを契機に、環境省は2020年から中央アルプスにライチョウを復活させる事業を本格的に開始しました。

 その復活作戦の一つが、前回紹介した飛来雌が産んだ無性卵を有性卵と差し替え、雛を孵化させる試みでした。しかし、この試みはニホンザルの妨害で失敗に終わりました。

どこの山から持ってくるか?

 もう一つの作戦は、他の山からライチョウを持ってきて、移植する試みです。問題は、どこの山から何羽のライチョウを持ってくるかです。日本のライチョウは北アルプスの集団と南アルプスの集団に大きく2つに分かれることが遺伝子解析から分かっています。中央アルプスは、その両アルプスの中間に位置しますので、どちらの集団からの個体を基に中央アルプスにライチョウを復活させるかが重要です。

 2018年に飛来した雌の羽を採集し、遺伝子を調べたところ、この雌は北アルプス系統で、北アルプス方面から飛来したことが分かりました。また、中央アルプス山麓の市町村に依頼し、学校等にあるライチョウの剥製標本を調査していただいたところ、宮田村小学校で100年以上前の大正時代に中央アルプス駒ケ岳で採集されたライチョウの剥製標本が1個見つかりました。その標本の遺伝子を分析したところ、絶滅した中央アルプスのライチョウは、北アルプス系統であったことが分かりました。

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