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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの暮らし 第31回 白黒鹿の子模様の鳥 ヤマセミ

垂直の土の崖に横穴を掘って繁殖

 ヤマセミは、3月下旬の頃から巣造りを開始します。巣は、川の増水などで削られてできた垂直の土の壁に自分で掘って造ります。嘴で1mほどの横穴を掘り、その先に産室と呼ばれるやや広い空間を作り、そこに卵を産んで温め、孵化した雛を育てます。

 産室ができるまでは、堀った土をバックの姿勢で外に出しますが、産室ができてから中で

 方向転換し、土を外に押し出します。鳥にとっては、大変な作業です。巣の完成には一ヶ月ほどかかります。

 ヤマセミが巣を造るのは、高さ3mほどある大きな崖に限られます。天敵のイタチ、キツネなどの哺乳類、さらにヘビやカラスなどから巣の安全を確保するためです。

多くの学生が調査を途中で断念

 長野市郊外の千曲川でカッコウの研究をしていた30歳から50歳代の頃、調査中によくヤマセミを見かけました。この鳥は、飛ぶときにケッ、ケッと大きな声で鳴くので、姿を見なくてもいることがわかります。

 信州大学で現職であった頃、ヤマセミを卒論研究のテーマにしたいという学生が何人もいました。かっこいい鳥ということで調査を始めるのですが、学生たちにとってはハードルの高い鳥でした。行動範囲が広いこともあって、なかなか巣を見つけられないのです。さらに、警戒心が強い鳥で、巣を見つけても近くからの観察が難しい鳥でした。

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