• Memorial Archives
  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

清々しき人々 第34回 アイヌ民族の精神を体現した 知里幸恵(1903−1922)

世界に多数存在する先住民族

 約二〇万年前にアフリカ大陸に登場した現在の人類の祖先ホモ・サピエンスはグレート・ジャーニーと名付けられた移動に出発し、南極大陸以外の大陸に分散していきました。その一部は氷結したベーリング海峡を横断し、一万年前に南米大陸の南端に到達しました。このヤーガンと名付けられた人々は一九世紀に進出してきた西洋の人々に殺戮されたりして減少し、その最後の一人が二〇二二年に死亡し、消滅してしまいました。

 このように人類が世界に浸透して行く過程で、未開の土地に最初に到達した人々は先住民族と名付けられ、一九九二年十二月に国際連合の「先住民族についての作業部会」により「外部の地域から異質の文化をもつ異質の人々が到来し、地元住民を支配し圧倒して人口を減少させ、非支配的な立場や植民地的状況にしてしまった時代に、現在の居住地域に生活していた人々の現存する子孫」と定義されています。

 現在も世界の九〇カ国以上に五〇〇〇以上の先住民族が生活し、その人数は合計すると三億七〇〇〇万人以上、すなわち地球の人口の五%程度と推定されています。筆者は世界の三〇以上の地域に生活する先住民族を訪問し、それらの人々の歴史と文化を紹介し、現在の社会が再考すべきことを検討するテレビジョン番組を制作した経験がありますが、その一連の番組の最後に紹介したのが日本に現在も生活するアイヌ民族です。

続きを読む
1 / 5

関連記事一覧