• Memorial Archives
  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの暮らし 第4回 草本の種子食に適応した鳥 カワラヒワ

草の実が主食

 3年間にわたる調査で分かったことは、この鳥は年間を通して草の実(種子)を餌としていることでした。秋から冬の時期に草の実を餌とする鳥は、スズメを初め他にも多くの種類の鳥がいるのですが、その多くは春から夏には昆虫食に変わり、昆虫で雛を育てます。それに対し、カワラヒワは繁殖期にもハコベやタンポポなどの草の実で雛を育てていて、草本の種子食に著しく適応した鳥であることがわかりました。

 3年間にわたる調査を終えた私は、卒業後もさらにこの鳥を研究したいと思い、京都大学理学部の大学院に進学しました。

全国各地を訪れて調査

 京都では、東山の南端にある桃山御陵とその周辺で調査を開始しました。まず分かったことは、この鳥は長野では庭木に巣を造っていたのですが、京都では盆地を取り巻く山地の林縁部でアカマツやスギ等の高い木に巣を造っていました。つがいになる時期は、長野では春先だったのに対し、京都では前年の秋でした。さらに、体の大きさは、長野より京都の方がやや小さいことなど、いくつかの違いに気づきました。これらの違いを理解するには、もっと広く見る必要がある。そう考えた私は、以後日本各地にも調査に出かけました。

 北海道の小清水原生花園では、海岸沿い砂丘で背丈1mにも満たないハマナスに営巣していました。また、繁殖の南限である鹿児島県志布志湾では、海岸沿いのクロマツ林に営巣しているなど、地域により営巣場所が異なっていたのです。その理由は、何なのか?私がたどり着いた結論は、この鳥は草の実で雛を育てることに適応した鳥なので、それらの餌が得られる場所が最重要で、その近くであったら営巣場所は背丈の低いハマナスでも、京都や鹿児島のように高い木の上でもよく、この鳥にとって営巣場所は二の次であるからだというものでした。

続きを読む
2 / 4

関連記事一覧