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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの暮らし 第4回 草本の種子食に適応した鳥 カワラヒワ

繁殖集団の再編成と渡りの仕組みの解明

 京都のカワラヒワは、一年中同じ地域に留まる留鳥に対し、長野では冬に一部が渡りをする集団でした。ですので、京都では秋からつがいとなり翌年の繁殖に備えていたのに対し、長野では渡りから戻り全員がそろう春先につがいとなっていたのです。つがいができる仕組みは、京都も長野も同じでした。繁殖地内の目立つ高い木に集まり、そこで行われる雄同士の争いと雄から雌への求愛行動を通しつがいができることを解明しました。繁殖を終えた後、生き残った成鳥と新たに生まれた若鳥が集まり、この行動を通して翌年の繁殖集団の再編成が行われていたのです。

 カワラヒワは、北はカムチャッカ半島から南は九州南端まで広い地域で繁殖していますが、体の大きさは、北の集団ほど大きく、南で繁殖する集団ほど小さいという、緯度と並行した連続変異があることを見出しました。また、冬にも各地に調査に出かけ、繁殖の南限を超えた沖縄で越冬している集団は、体の大きさから最も北で繁殖する集団で、北で繁殖する集団ほど冬には南に移動し越冬するこの鳥の渡りの仕組みをも解明しました。

カワラヒワの研究がその後の鳥の研究の原点に

 この鳥の8年間にわたる研究で学位を取得し、信州大学に戻った私は、以後研究室の学生とこれまで30年以上にわたり実に様々な種類の鳥を研究してきました。カッコウ、ブッポウソウ、フクロウ、ライチョウなどです。大学院でカワラヒワを研究していた頃、研究室の同僚から中村はカワラヒワの事しか知らないとよく言われました。私にしてみれば、次々に新たな疑問と課題が生まれ、他の鳥を研究する余裕などなかったのです。

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