『あなたの隣の精神疾患』

春日 武彦/著

集英社インターナショナル/刊

定価1,012円(税込)

多かれ少なかれ誰でも潜在的に有するもの

 学校図書館に勤めていると、生徒から不眠や不安といった心の不調を相談される機会が多くある。うつ病や摂食障害といった精神障害を訴える児童生徒も少なくない。新型コロナのために学校での様々な活動ができなくなり、精神的に不安定になっている子どもも増えているという。

 そのように身近な人も悩んでいる精神疾患について詳しく知りたい時にこの本が役に立つだろう。精神科医である著者が経験した様々なエピソードをもとに、うつ病やパーソナリティ障害、統合失調症、引きこもりといった代表的な精神疾患とその対処法が分かりやすく解説されている。

 例えば過剰な要求をしてくるクレーマーに遭遇することがある。彼らの行動がパーソナリティ障害的な心性に根差していることを理解すれば、より適切な対応が取れるようになるだろう。具体的な対処法も挙げられているので、実際にそのような人たちに対応する際にはきっと役に立つ。

 そのように精神疾患の病状と治療について読んでいくと、精神疾患は「わたしたちの普段の延長ないしは隣人」であることを実感する。物事を過剰に心配してしまう神経症などは、多かれ少なかれ誰でも潜在的に有しているのではないだろうか。その意味では、誰もが、いつ精神疾患になってもおかしくない、精神疾患予備軍なのだ。

 だからこそ、精神疾患についての正しい知識を持っておくことが大切である。精神疾患についての正しい理解があれば、そのような時に余裕を持って対応できるのだから。

(評・東京都立南多摩中等教育学校 学校司書 杉山 和芳)

(月刊MORGEN archives2021)

関連記事一覧