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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの生活 第5回 カッコウの新たな宿主 オナガ

 各地域のオナガの巣にカッコウ卵に似せた人工の擬卵を入れ、その卵がオナガに受け入れられるか、排斥されるかを実験したのです。結果は、托卵歴の古い地域のオナガほど卵識別能力が高く、新しいほど低いという結果でした。また、オナガの巣の前にカッコウの剥製を置き、オナガがどの程度剥製に攻撃するかを3地域で比較しました。その結果も、托卵歴の古い地域ほど攻撃性が高く、新しい地域では低いという結果でした。

 これらの事実から、托卵が始まってから10年ほどで、オナガはカッコウに対する攻撃性や卵識別能力を身に着け、カッコウの托卵に対する対抗手段を確立していたのです。

不利な線模様をなぜカッコウ卵は持っているのか?

 オナガの巣に托卵されたカッコウ卵は、オナガの卵には似ていなく、大きさや卵の模様にかなりの変異がありました。托卵が始まった当初、それらの多くの卵がオナガに受け入れられていたのですが、オナガが卵識別能力を身に着けてからは、オナガ卵にない線模様を多く持つカッコウ卵ほど、オナガに排斥される傾向があることが分かりました。オナガは、自分の卵に似ている卵は受け入れ、似ていない卵は排斥するようになったからです。

 ここで、大きな謎に直面しました。なぜ、カッコウ卵の多くは不利な線模様を持っているのだろうか?その答えのヒントとなる論文がありました。石沢慈鳥が1930に発表した論文です。それによると、全国のカッコウの宿主と卵模様の検討から、信州及び富士山麓では、ホオジロへの托卵が多く見られ、ホオジロ卵に似た線模様を持つカッコウ卵は、これらの地域特産であると述べています。実際、その頃に採集されたホオジロ卵によく似た線模様の多いカッコウ卵が、今も各地の博物館に残されています。 

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