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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの暮らし 第10回 春の訪れを告げる身近な鳥 ヒバリ

 長野市街地の千曲川でカッコウの研究をしていたころ、カッコウに托卵される様々な鳥について、カッコウ卵と自分の卵を区別する卵識別能力がどの程度あるかを調査したことがあります。巣を見つけ、カッコウ卵に似せて作った擬卵をこっそり入れて、その卵が巣から出されるか、受け入れられて温められるかを調べました。

 ヒバリの場合には、その実験に使う巣をまとまった数見つけ出すのに大変苦労しました。また、50歳を過ぎてからは、その上流の千曲川中流域にあたる場所で、調査地の河川敷内で繁殖するすべての種類の鳥を対象に調査したことがあります。

 繁殖するすべてのつがいのなわばりを明らかにするか、またはすべての巣を発見することで、繁殖密度と繁殖成功率を明らかにしようとしました。その調査でも、ヒバリには大変苦労しました。雄のさえずりからなわばり数はすぐにわかるのですが、巣が見つからないのです。鳥の巣を見つけるのが得意な私にとっても、ヒバリは手を焼く鳥でした。私がこれまでに発見したヒバリの巣は、10巣に届きません。その多くは、歩いていて足元の巣から飛び出した雌に気づいて見つけたものです。

ヒバリはなぜ減ったのか

 ヒバリは、近年数が減っているといわれています。東京都が実施した鳥類繁殖分布調査の結果を分析した植田ほか(2005)によると、1970年代には307メッシュ中101メッシュでヒバリのさえずり等による生息が確認されましたが、1990年代には28メッシュと急激に減少していました。減少の原因は、この間の畑地面積の急激な減少と麦の栽培から野菜類の栽培という畑地の質的変化によることが分かりました。

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