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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの暮らし 第14回 喧しくさえずる鳥 オオヨシキリ

 一夫多妻の雄は、最初につがいとなった雌の雛に餌を与えますが、2番目以降の雌の雛の子育ては手伝いません。オオヨシキリで一夫多妻が見られるのは、雌のみでも子育てが可能であるからです。雌は、雄のなわばりの質を評価し、良いなわばりを持つ雄では先の雌がいてもその雄とつがいとなるので、一夫多妻となると考えられます。どの雄とつがいとなるかは、雌の選択権にゆだねられているのです。

カッコウの雛を育てる

 オオヨシキリは、日本ではよくカッコウに托卵される鳥です。カッコウの雌は、オオヨシキリが巣造りの段階から近くから様子を伺い、産卵を開始した時期にこっそりと素早く托卵します。托卵されたことにオオヨシキリが気づかずに卵を温めてしまうと、カッコウ卵の方が1日か2日先にふ化します。孵化したカッコウの雛は、丸裸でまだ目も開いていませんが、背中の窪みに巣の中にあった卵をのせ、巣の外に出してしまい、巣を独占するのです。

 カッコウの雛が巣に入らないほどに成長した頃には、育ての親のオオヨシキリとは似ても似つかない姿なのですが(写真2)、最後までカッコウの雛を育てあげてしますのです。
カッコウの雛が育ての親をどのように操作しているのかについては、まだよくわかっていない今後の課題です。

写真2 托卵されたことに気づかず、カッコウの雛を育てるオオヨシキリ

脚注:写真上(アイキャッチ)は、茨城県那珂市在住宮本奈央子氏撮影

なかむら ひろし 1947年長野生まれ。京都大学大学院博士課程修了。理学博士。信州大学教育学部助手、助教授を経て1992年より教授。専門は鳥類生態学。主な研究はカッコウの生態と進化に関する研究、ライチョウの生態に関する研究など。日本鳥学会元会長。2012年に信州大学を退職。名誉教授。現在は一般財団法人「中村浩志国際鳥類研究所」代表理事。著書に『ライチョウを絶滅から守る!』など。

(モルゲンWEB)

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