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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの暮らし 第22回 黄色い大きな嘴の鳥 イカル

 しかし、それから100年近くが経過した現在の長野県では、ホオジロへの托卵はほとんど見られません。ホオジロの巣の中にカッコウ卵に似せて造った擬卵を入れてみると、すぐに巣から放り出されました。

 そのことから、100年ほど前の信州ではホオジロの卵に似た線模様を持つカッコウが多く生息していたが、その後ホオジロは自分の卵とカッコウ卵を区別してカッコウ卵を巣から排斥するようになり、カッコウはホオジロには托卵できなくなったと考えられます。つまり、カッコウ卵に見られる線模様は、かつてホオジロに托卵していたころの名残という結論に至りました。

 では、ホオジロと同様に線模様を持つイカルは、カッコウ卵と自分の卵を区別する卵識別能力をどの程度持っているのだろうか?その疑問に答えるため、イカルの巣を探す必要があったのです。

イカルも托卵された経歴があるのか?

 発見した10ほどのイカルの巣の中に、カッコウ卵に似せた擬卵を入れる実験をしたところ、ほとんどの擬卵は巣から放り出されたのです。イカルは、ホオジロと同様に卵識別能力が高いことが分かりました。このことから、イカルはホオジロと同様に、かつてはカッコウに托卵された経歴を持っており、その頃に確立した卵識別能力を、今も持っている可能性が高いという結論になりました。

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