『3000万種類の昆虫がいる雨林』

ポール・ロケット/文  藤田 千枝/訳

玉川大学出版部/刊

本体1,900円(税別)

「雨林」の世界と人間のリアルが浮かび上がる

 本書は、びっくりカウントダウン!全6巻、つまり、「私たちの周りには沢山の面白い数が隠れている。驚く程大きなものから、とても小さなものまで。びっくりするような数から〇〇を見つめ直してみよう」というシリーズの一冊。

 さて、びっくり。雨林と言えば熱帯雨林が頭に浮かぶが、温帯にも、かつては南極にも雨林があったのだ。

 次のびっくり。世界には一千京(概算)の昆虫が生きているが、陸地の6%しかない熱帯雨林に、なんと80%が暮らしている。あっ、6%って、50年前には14%だったのだけど、今はこの数。毎年英国と同じ大きさ、例えれば、「毎年8571295個」のサッカー場が、凄い勢いで破壊され消えて行くという、「びっくりポン」のカウントダウンだ。

 そこには、千五種以上の魚が住むアマゾン川が流れ、少なくとも三千種の食用果実が実り、260種の新世界ザルが木によじ登って叫んでいる。なのに、毎日、137の植物・動物・昆虫の種が、つまり、一時間あたり5種以上の生き物が消滅する。動植物だけではない。ブラジルでは、70万人200部族の先住民が生きているが、それは、それまでに90部族が絶滅した結果をも示す。

 何故、絶滅した?誰が、どんな理由で滅ぼした?

 本書から、具体的な数を通して様々な視点で見つめ直した「雨林」の世界と人間のリアルが浮かび上がる。

 読者は、驚異的な数に興味を抱き、数で表示される事例に身近なものとの対比を想像し、更に深く惹き込まれ、頁を開く度に、「へぇ」と自分も驚きつつ他者に語らずにはいられなくなる。

 本書は、各頁の色合いも緑を基調に眼に優しく、かつ、親切な「読書案内」「大きな数」「索引」付きの、新たな魅力の科学絵本である。

(評・自由の森学園図書館 司書 大江 輝行)

(月刊MORGEN archives2015)

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