『夢のビッグ・アイデア カマラ・ハリスの子供時代』

『夢のビッグ・アイデア カマラ・ハリスの子供時代』

ミーナ・ハリス/文 アナ・R・ゴンザレス/絵 増田 ユリヤ/訳

西村書店/刊

本体1,500円(税別)

女性初、米副大統領の夢の原風景―「できない」が「できるかもしれない」に変わっていく

 「私は女性として初めての副大統領ですが、最後にはならないでしょう。今夜、これを見ている全ての小さな女の子たちは、アメリカが可能性のある国であることを知ったからです。」

 2021年1月20日、女性として、アフリカ系、アジア系アメリカ人として初の副大統領となったカマラ・ハリスが選挙戦の勝利宣言スピーチで述べた言葉は大きなメッセージとして世界中で報道された。

 この絵本は、ハリスの姪ミーナが、幼少期に聞いた叔母ハリスとその妹であり、ミーナにとっては母であるマヤの少女時代のエピソードを膨らませて書かれたものだ。幼いハリスとマヤは、空き地に皆の遊び場を作りたいという夢を持つ。その夢は周りの子供たちだけでなく、徐々に大人たちも巻き込んでいき、やがで「できない」が「できるかもしれない」に変わっていく様子がやさしくカラフルなタッチの絵とともに綴られている。

 カマラが破った「ガラスの天井」も、幼いハリス姉妹が諦めずに挑んだ結果、様々な人の力が集まって現実となったように、夢を追い続けた多くの人々の上に成し遂げられた。むろん、大きな夢やビジョンを持って一歩を踏み出すのは易しい事ではないし、昨今のコロナ禍によって、多くの当たり前が崩れ、先が見通せない毎日が続いている。しかし、この異常事態は、今までのものを見直し、新しく創り出すキッカケにもなりうる。今世の中で求められているのは、自分に何ができるかを考え、具体的に実現しようとする「発想力」なのではないだろうかと考えさせられた。ぜひ、子どもだけでなく大人も手に取って読んでみてほしい。

(評・佛教大学歴史学部4回生 力武 裕子)

(MORGEN 2021 1201)

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