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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの生活 第6回 里山の豊かさの指標 サシバ

 サシバの渡り集合地として日本で特に有名な場所が愛知県の伊良湖岬や鹿児島県の佐多岬で、天気の良い日には1日に数千羽のサシバが海を越えて渡るのを見ることができます。

里山環境の衰退と共に減少

 日本の里山環境に適応したサシバも最近は全国的に生息地が縮小傾向にあり、環境省のレッドリストでは絶滅危惧種のII類に指定されています。私が住んでいる長野県北部に位置する飯綱町では、20年ほど前に調査した時には10つがいほどが繁殖していたのですが、そのうち今年も繁殖がみられたのは1つがいのみでした。

 サシバの分布の縮小や繁殖数の減少には、最近の里山環境の衰退が密接に関係しているといわれています。日本の豊かな里山環境は、たえず人間が手を加えることで豊かな環境が維持されてきました。それが、過疎化の進行で人の手が十分に入らなくなった結果、自然の豊かさが失われてきているのです。

なかむら ひろし 1947年長野生まれ。京都大学大学院博士課程修了。理学博士。信州大学教育学部助手、助教授を経て1992年より教授。専門は鳥類生態学。主な研究はカッコウの生態と進化に関する研究、ライチョウの生態に関する研究など。日本鳥学会元会長。2012年に信州大学を退職。名誉教授。現在は一般財団法人「中村浩志国際鳥類研究所」代表理事。著書に『ライチョウを絶滅から守る!』など。

(モルゲンWEB)

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