野鳥と私たちの暮らし 第16回 小さな猛禽 モズ
春に行われる嫁入り
モズは、なぜ秋に行われる高鳴きにより雌雄が別々のなわばりを確立し、冬を過ごすのでしょうか。その理由は、モズは肉食であるため、餌が得にくい冬の時期は、雌雄2羽が同じなわばり内で過ごすには餌の確保が難しいからなのでしょう。留鳥の多くは、私が若いころに研究したカワラヒワのように、秋に再開される繁殖活動によりつがい形成が行われます。
では、雌雄別々のなわばりで冬を過ごしたモズの雌雄は、翌年の春にどのようにつがいとなるのでしょうか。その答えは、当時大阪市立大学でモズの研究をされた山岸哲さんにより明らかにされました。春になると雌は自分のなわばりを捨て、雄のなわばりに入って行くことでつがいとなっていました。雄の住むなわばりに嫁入りすることで、つがいとなっていたのです。
はやにえ
モズのもう一つの特徴的な習性として「はやにえ(早贄)」があります。これは、モズが捕えた獲物を木の枝や有刺鉄線などに突き刺しておく習性のことです(写真3)。 この獲物がいけにえのように見えたことから「モズのはやにえ」といわれています。はやにえは春から秋に行われ、特に多いのは秋から初冬とのことです。