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野鳥と私たちの暮らし 第17回 カルガモ 最も身近なカモ カルガモ

なぜ雌雄同色なのか

 カルガモを見るたびに不思議に思うことがあります。それは、なぜカルガモだけが一年中雌雄同色の目立たない地味な姿をしているのかという点です。マガモに代表されるように、多くのカモでは雄が鮮やかな姿をしているのに対し、雌は地味な姿をしています。その理由は、カモ類の雛は孵化した翌日から自分で餌を採ることができることにあります。他の多くの鳥のように、雛に親が餌を与えることはしません。ですので、片親のみでも子育てが可能で、子育てを担当する雌親は、天敵に目立たないように地味な姿をしていると考えられます。一方、子育てから解放されている雄は、多くの雌から選ばれ、多くの雌を得るために鮮やかな色彩の姿になったと考えられています。

 では、雄も地味なカルガモでは、雄も雌と一緒に子育てを手伝うかというと、他のカモと同様、全く手伝いません。

 鳥一般に当てはまるこの雌雄の違いを説明する考えが、カルガモには当てはまらないのです。この問題については、別の視点からの説明が必要のようですが、それが何かについて、私は納得のできる説明をまだ持っていません。

脚注:写真上・下ともに茨城県那珂市在住宮本奈央子氏撮影

なかむら ひろし 1947年長野生まれ。京都大学大学院博士課程修了。理学博士。信州大学教育学部助手、助教授を経て1992年より教授。専門は鳥類生態学。主な研究はカッコウの生態と進化に関する研究、ライチョウの生態に関する研究など。日本鳥学会元会長。2012年に信州大学を退職。名誉教授。現在は一般財団法人「中村浩志国際鳥類研究所」代表理事。著書に『ライチョウを絶滅から守る!』など。

(モルゲンWEB)

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