『日本語を味わう名詩入門』(全20巻)

全集の中で特に印象深い詩は

 どれもすべて味わい深いですが、例えば、八木重吉が自分の娘に宛てた

『桃子よ』

もも子よ

おまえがぐずってしかたがないとき

わたしはおまえに げんこつをくれる

だが 桃子

お父さんの命が要るときがあったら

いつでもおまえにあげる

 という詩があります。自分の命をいつでも「やる」ではなく、「あげる」という言葉には、さりげない言い方の中にも、親としての深い愛情を垣間見ることができますね。

 当初、三好達治は難しいかと考えていましたが、読み解くとそうでもない。仏詩人に強く影響を受けた初期の作品から、徐々に日本風な詩作へ回帰していくプロセスが、はっきりと見て取れます。それらは生き物の生態から人間の孤独を描出する『春』、静かなリフレインがノスタルジアを演出した『雪』などに容易に汲み取れるでしょう。

 まど・みちおの『このよでは』は、「蚊がおしっこをする」という発想の凄さ、ユーモアに圧倒されます。読んでみると、どの作家、作品にも魅了されるべきものがあり、仕舞には、全ての詩人を好きになってしまうんですよ(笑い)。

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