「わたしのマンスリー日記」 第1回 “Do for Others”

それでも本を書く!

 そんな状況下で1冊の本を書くことが至難の業であることはわかっていましたが、当時は単純に「本を書くことならできる、いやそれしかできない」と考えていました。決して他人(ひと)のために(for others)書いたわけではありませんし、増して自分のALS以降の生き方が他の人たちに勇気や元気を与えることになるなどとは夢にも考えていませんでした。正確に言えば、10万人に1人か2人しか罹らないという不治の難病を突き付けられてどう生きたらいいのか、自分のことで精いっぱいだったというのが偽らざる姿でした。

 そんな私の目を開いてくれたのは大分の小学校6年生たちでした。ALS宣告後2冊目に出した『日本列島 地名の謎を解く』(東京書籍、2021年)を大分市立半田小学校の石井真澄先生に送ったところ、たまたま本に記載されていた「姫島」が修学旅行の候補の1つに挙げられていたこともあって、その後奇跡ともいうべき交流が生まれました。

 また、この本の書評を書いていただいた縁で知己になった明治学院学院長(当時)小暮修也先生との縁で、私の生き方情報は爆発的に広がっていきました。それは例えて言えば、「小暮扇子」を一気に開いたようものでした。

 2冊目を書いた時は手足は完全に動かず発声もできない状況だったことから「奇跡の1冊」とも「驚異の出版」とも評されました。そんな中私は3冊目の執筆を進め2022年7月に『夢はつながる できることは必ずある!-ALSに勝つ!』(東京書籍)を上梓しました。この本についても小暮旋風(!)は吹きました。

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