塚田 万理奈さん(映画監督)

 部活も入らず友人関係も途絶えると、当たり前だが休日にはまるでやることが見つからない。以前とは打って変わり今度は暇をつぶすため、少女はまたせっせと映画館へ足を向けた。そして、そんなふうに一日を映画館で過ごすうち、あるときふと

「今一番好きなことは映画かもしれないなァ……」

 そう思うようになった。(やりたいことはまだ全然はっきりはしないけれど、とにかく今一番自分の中心にあるのは映画に間違いない。それに、映画をつくる人たちに会ったら友達になれるかもしれないし……)思いを胸に叩いたのは日大芸術学部、映画学科の門だった。

摂食障害のはてに

 希望を抱いて開いた芸術の扉。しかし、なにしろ何の自信も実績もないところからのスタートである。それでも、「大変だったのでは?」という問いには、

「大学は本当に面白かった」

 と目を輝かせた。想像した通り、キャンパスには、映画が大好きな若者たち、映画を志す若人の熱気が心地よく溢れていた。雑多な個性と楽しく触れ合う楽しい日々……、しかし次第に塚田さんはあることに気付いてゆく。

「私は嘗められている—―」

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