「わたしのマンスリー日記」 第12回 林真理子理事長、辞めなくていいですよ!!――イチハラ、ハピネス。

 そうかと思えば、普段は大人しいのですが酒が入ると相手を攻撃するといった若手の教授もいて、私も被害に遭ったことがあります。逆パワハラですね。
 このように書いてくると、思い出したくもないことが次々と頭をよぎります。学内のある組織の長をめぐる選挙に巻き込まれたこともあります。もともと私は組織の長になる意志など全くなく、全国の地名をめぐって本を書いていた方がよほど気軽で良かったのですが、大学のためにという大義名分のもとに立候補を余儀なくされ、最初の選挙は難なく当選。教員数170名に及ぶ大きな組織の長でした。この時生まれて初めて鬱(うつ)を経験しました。それまで自由に講演や地名調査で全国を飛び回っていた身だったのが、いきなり公務員として9時~5時の生活を強いられたのですからたまりません。天国から地獄に突き落とされた思いでした。

 ある晩単身赴任の宿舎で一人で寝ていた時、夢を見ました。寝ている自分の上に天井が激しく落ちてくる夢でした。”わぁーー!!助けてくれ――!”と叫んだ瞬間目が覚めました。妻に電話したらすぐ駆けつけてくれ、筑波山に車で連れて行ってくれました。信州生まれ信州育ちの私には山を見せることが一番の薬だと考えたからでした。というよりも、私がどうしても山を見たい! という衝動に駆られていたというのが正しいでしょう。
 「ケキョ、ケキョ、ケキョ……」
 筑波山の中腹に立った時、どこからか季節外れの鶯の鳴き声が聞こえました。その瞬間得も知れず涙が込み上げてきて頬を濡らしました。そして私の気持ちは霧が晴れるように落ち着いていったのです。
 こんな話をすると、息子たちは普通の人がやっていることができないオヤジの方がおかしいと揶揄するのですが、その通りかもしれません。

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