野鳥と私たちの暮らし 第1回 ムクドリ

繁華街に塒をとるムクドリ

開けた環境に棲む鳥

 これまで「森に棲む鳥」について31回にわたり解説してきましたが、今回からは新しいシリーズ「野鳥と私たちの暮らし」と題し、開けた環境に棲む鳥について解説します。

 先のシリーズでもふれたように、四季を通して雨の降る日本は本来森の国です。人々が狩猟採集生活をしていた縄文以前の日本列島は、広く森で覆われていました。その森の国が弥生時代以降に始まった稲作により、平地の森が水田、畑、集落に変わり、今日の里や平野部の開けた環境が作り出されました。その開けた環境に適応し、人間の生活と密接に関わって生活してきた鳥が、スズメ、カラス、ムクドリ等に代表される開けた環境に棲む鳥です。

 弥生時代以降、この開けた環境に棲むようになった鳥は、かつて森の国の時代には河川や海岸等のわずかな開けた環境で細々生活していた鳥、森から抜け出し、開けた環境に適応して移り住んだ鳥、さらには大陸から日本列島に新たに入ってきた鳥なのです。

農耕地に適応したムクドリ

 新しいシリーズの最初の鳥として、水田や畑、果樹園等の農耕地に適応したムクドリについて紹介します。この鳥は、農耕地のほか村落や市街地の公園などにほぼ年間を通して棲む、日本ではごく身近な鳥です(写真上)。

 4月から5月には、木の洞や建物の隙間に巣を造って繁殖しますが、雛が巣立つ6月頃から群れになり、夏、秋、冬を通し群れで生活する鳥です。春から夏には、昆虫やミミズ等の動物が餌ですが、秋から冬にはリンゴ、カキ等の果実が主な餌になります。日中は農耕地などに群れていますが、夜には集団で塒を取る習性があります。

 夏には各地の林に分散し小群で塒をとりますが、秋から冬には次第に大群となり、冬には数万羽の大群で塒をとることもあります。今から50年ほど前までは、ムクドリは郊外の竹藪や山地の林に塒をとっていました。ところが、最近では市街地の繁華街に大軍で塒をとるようになりました(写真2)。

市街地のヒマラヤスギに塒をとるムクドリの大群

なぜ市街地に塒場所を変えたのか

 その理由は、ムクドリにとって人は以前のように怖い存在でなくなったからです。今から60年ほど前の私が子供の頃には、空気銃などでムクドリやスズメ等の野鳥を捕って食べていました。その頃は、野鳥にとって人は怖い存在でした。しかし、その後、野鳥を捕獲することが禁じられ、人が野鳥に危害を加えることがなくなったからです。

 その結果、野鳥は数十年かけて郊外に塒をとるよりも、一晩中明るく、夜も人や車が絶えない市街地の方が、フクロウなどの夜の天敵から安全で、かつ快適に夜を過ごせることを学んだからです。人がいる場所の方が夜に安全であることを学んだのは、ムクドリだけではありません。スズメやカラスなどの野鳥も同様で、多くの野鳥が人の生活圏に進出し、市街地に塒をとるようになりました。

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