• Memorial Archives
  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの暮らし 第1回 ムクドリ

市街地に進出し、人の生活を脅かす野鳥

 現在、日本の多くの都市には、ムクドリのほかスズメ、カラス、ドバト等の野鳥が進出して問題となり、担当する行政関係者を悩ませています。夕暮れと共に、数千から数万羽のムクドリが市街地に集まってきて、空を黒くして旋回する姿は不気味であるばかりでなく、街中で一晩にする糞の量は多量です。通行人の体や衣服、車を糞で汚すだけでなく、歩道一面に残された糞とその悪臭は、街の景観を台無しにします。さらにその上、ムクドリの場合には夜も大声で鳴くので騒音がひどく、精神的に問題をきたす人もいるほどです。

 私の住んでいる近くの長野市街地では、2000年代の初めからこの問題が深刻になりました。長野市の繁華街にある道路のケヤキ並木やその隣の小学校のヒマラヤスギにムクドリが大群で塒をとるようになったからです。バス停は糞で汚され、近くの小学校の校庭は積もった糞で子供たちが遊べなくなりました。市民からの苦情に、市役所の職員はあの手この手の対策を十数年間とってきたのですが、一向に解決しません。市は多額の予算を使い校庭脇の十数本のヒマラヤスギの道路側の枝と上半分を切ったのですが、それでも数万羽のムクドリの大群は塒場所を変えようとしませんでした。

繁華街からのムクドリ撃退作戦

 万策尽き、打つ手がなくなったこの段階で、信州大学で鳥の研究をしていた私に、相談がありました。現地を視察し、事の深刻さを知った私は、記者会見を開き、事前にムクドリ撃退作戦をマスコミに公開しました。その後3日間かけ、ヒマラヤスギの塒からムクドリの大群撃退に成功し、ムクドリは市街地からいなくなり、郊外に塒場所を移したのです。

続きを読む
3 / 4

関連記事一覧