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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの暮らし 第2回 チョウゲンボウ

 猛禽類は一般につがいごとに広い行動圏を持ち、その範囲全体をなわばりとして防衛しています。それに対し、十三崖のチョウゲンボウは、巣穴の周りの狭い範囲をなわばりとして防衛し、餌はそこから離れた場所に出かけて捕る生活をしていたのです。スペインなどの外国のチョウゲンボウも集団で繁殖する例が少数確認されていますが、これほど多数の個体が集団で繁殖する例はないことが指定の理由でした。

十三崖での繁殖数の減少

 指定当時20つがいほどが繁殖していた十三崖のチョウゲンボウは、その後減少の一途をたどりました。指定後60年以上が経過した現在では、繁殖が見られない年も出ているほどです。減少の原因の一つは、崖の前に広がる採餌環境の悪化です。崖の前には、夜間瀬川の河原、その先には水田やリンゴ園といった餌を捕るのに適した環境が広がっていました。それが、夜間瀬川の河原の植物の繁茂、その先の農耕地でのビニールハウスの普及により、チョウゲンボウにとって餌の得にくい環境に変わったからです。もう一つの原因は、夜間川の河川改修により川の流れが固定化し、洪水が起きても崖下にたまった土砂が流されずに堆積し、そこに樹木が生えて崖の高さが失われたこと、崖面にも植物が生え、営巣できる崖の面積が減少したことです。

 さらに3つ目の原因は、この十三崖に最近ハヤブサが1つがい繁殖を始め、チョウゲンボウが営巣できる崖がさらに狭められたことです。同じ長野県の上田市の千曲川に面した岩鼻という三角形をした崖には、多い時には10つがいほどのチョウゲンボウが繁殖していたのですが、この崖でも1つがいのハヤブサが繁殖を始めると、それ以来この崖にチョウゲンボウの繁殖は見られなくなりました。

 現在、文化庁が資金を出し、中野市が十三崖にチョウゲンボウを呼び戻す事業を開始しています。崖面と崖下の植物の除去、崖面への人口巣穴の設置等を行っているのですが、繁殖数は増加していません。

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