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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの暮らし 第12回 神社に移り棲んだフクロウ アオバズク

 その神社の境内に移り住んだのは、アオバズクだけではありませんでした。ブッポウソウも同様に移り住みました。しかし、今ではブッポウソウが生息する神社はほとんどなくなりました。一方、アオバズクの方は今でも神社で繁殖していますが、その数は減少の一途をたどっています。

神社から消えてゆくアオバズク

 私が子供の頃に遊んだ神社には、今はアオバズクはいません。古くなった神社の建て替え費用捻出のため、ケヤキの大木が業者に売られ、伐採されたからです。かつては、そこで春祭り、秋祭りが行われ、夏には盆踊りと、地域の人が集まる場所でした。けれども、今はそれらの祭りは途絶えがちとなり、神社で遊ぶ子供の姿も見られなくなりました。25年前にアオバズクを調査した神社にも、今はいなくなりました。いなくなったのは、多くの場合神社の境内が駐車場になり、周りが宅地化するなどにより、餌の昆虫が得られなくなったことが原因のようです。

 日本人にとって長い間神がすむ神聖な場所であった神社の境内は、今の時代ではそうではなくなりつつあります。神社の境内から姿を消したブッポウソウや姿を消しつつあるアオバズクは、かつて日本人が大切にしてきた神社を介した地域のまとまり、さらには心や精神性のよりどころをも失いつつあることを示唆しているように思えてなりません。

なかむら ひろし 1947年長野生まれ。京都大学大学院博士課程修了。理学博士。信州大学教育学部助手、助教授を経て1992年より教授。専門は鳥類生態学。主な研究はカッコウの生態と進化に関する研究、ライチョウの生態に関する研究など。日本鳥学会元会長。2012年に信州大学を退職。名誉教授。現在は一般財団法人「中村浩志国際鳥類研究所」代表理事。著書に『ライチョウを絶滅から守る!』など。

(モルゲンWEB)

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