• 十代の地図帳
  • 青春の記憶に生きるヒントを訊くインタビュー記事

羽田 圭介さん(小説家)

大学は商学部に

 高校時代に小説家デビューしていたので、大学で文学を学ぶ必要はないかな、と思って。

 文学は自分でやればいい、それよりも、文系の学部の中で学問として学ばなければ触れることのないような全く違うジャンルをやってみたいと考えたんです。

卒業後一度は就職を

 当時から、将来は作家になるとしか考えていなかったんですが、新卒採用は人生に一度きりです。それに就職しておいたほうが知見も広がるかもしれない、そう考えて。

 でも仕事を始めるとすぐに、小説家にとって会社員経験はあまり重要ではないな、と感じました。狭い業種の経験を切り売りするにしても、最初は良くてもすぐに限界がくるだろうと。それよりは、自分で情報を仕入れて、それを作品にする思考回路を鍛えるほうが大事、と考えたんです。結局1年半の会社員生活でしたが、自分の生き方や考え方を確認できた意味では良かったと思います。

若者にアドバイスを

 他者や自分と違う価値観を持つ人と接する機会を増やすべきだと思います。といっても別に海外や外国人というわけではなくて、日本にいて沢山手に取れるもの。本であったり、音楽であったり、映画であったり……。

 自分の同世代や横並びの顔しか見ていないと多様性が失われるんです。異なる価値観を認められるようにならないと人生の幅は広がらない。〈同時代、同世代の外側へ出る〉これがとても大事なことだと考えています。

はだ けいすけ 1985 年、東京都生まれ。明治大学商学部卒業。高校在学中の 2003 年、『黒冷水』で文藝賞を受賞。その後、『走ル』(10 年)、『「ワタクシハ」』(11 年)、『隠し事』(12 年)、 『メタモルフォシス』(14 年)などの作品を発表。2015 年『スクラップ・アンド・ビルド』で芥川賞を受賞。

(写真:御堂 義乘)

(月刊MORGEN archives2015)

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