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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

清々しき人々 第18回 物語を実在の歴史に転換した H・シュリーマン(1822-1890)

 夫人を略奪された国王メネラオスは武将オデュッセウスを同伴してトロイアに出向きヘレネを返還するように交渉しますが成功しませんでした。そこでスパルタを中心とするペロポネソス半島に存在する国々が協力してトロイアと対戦することにし、大将は武勇で名高いミケーネ国王アガメムノン、副将はメネラオスで、一〇万人規模の兵士と約一二〇〇隻の軍船からなる艦隊を編成、エーゲ海域を横断してトロイアに到着します。

 浜辺に到着した艦船から最初にプロテシラオスが上陸してトロイアの大将ヘクトルと対戦しますが、討死してしまいます。しかしアキレウスの奮戦などもあり、ギリシャ連合が優勢になったため、トロイア王国の軍勢は城壁の内部に退却し城門を閉鎖してしまいました。アキレウスはトロイア王国周辺の国々を攻撃して陥落させますが、トロイア王国の堅固な城壁は容易に突破できず、膠着状態のまま九年が経過してしまいます。

 この長期の戦争を決着させたのが「トロイアの木馬」作戦です。トロイアではウマが神聖な動物とされていました。そこでギリシャ連合は内部に少数の精鋭の兵士が潜伏した巨大な木馬を製作して城門の前面に放置し(図3)、軍隊は付近の小島に撤退しました。トロイアの軍隊は木馬の処理について、焼却する、破壊する、城内に搬入するという三案を検討しますが、結局、第三に決定し、城内の広場に移動させ、トロイアの兵士たちは勝利の宴会を開催しました。

図3 トロイアの木馬

 夜半になり木馬の内部に潜伏していた兵士が外部に進出して内側から城門を解放し、沖合の小島に待機していたギリシャ連合の兵士たちが上陸して飲酒で泥酔していたトロイアの兵士を殲滅します。トロイア国王プリアモスは神殿に逃避していましたがアキレスの息子ネオプトレモスに殺害され、トロイア王国は滅亡しました。このように紹介してくると、神々の世界と人間の世界が渾然一体となっており、ホメロスの『イリアス』は架空の物語のようです。

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