• Memorial Archives
  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの暮らし 第20回 世界的に減少が懸念される鳥 カシラダカ

かつて小椋干拓地で見られた大群

 私が20歳代後半に京都でカワラヒワの研究をしていた頃、宇治川の蛇行でできた湿地を開墾した小椋干拓地と呼ばれる広大な水田地帯で、冬の時期には1,000羽ほどのカシラダカの大群を見ることができました。スズメやアトリの大群と共に、収穫後の水田で落穂や籾を食べていました。また、この場所は、北から渡って来たカワラヒワの越冬地や渡りの中継地にもなっていた場所です。

 その冬の光景も今は見られなくなりました。干拓地の真ん中に駅ができ、街が造られたためです。広大な水田地帯は失われ、京都盆地の冬の野鳥の重要な越冬場所はすっかり失われてしまいました。

世界的にも減少傾向

 千葉県の我孫子に山階鳥類研究所があります。山階芳麿博士が設立した日本でただ一つの鳥類研究所です。ここでは、鳥を捕獲して足輪を付け放鳥することで、鳥の移動を研究する標識調査が長年行われてきました。その長期間にわたるデータの解析から、この研究所副所長の尾崎清明さんが、日本のカシラダカはこの40年間に年々急速に数を減らしていることを明らかにしました。1980年には全標識数6万7千羽のうち、カシラダカは総数の28%でしたが、それから35年後の2015年には標識数が12万羽に増加したにもかかわらず、カシラダカの割合はその4%に激減していたのです。

続きを読む
3 / 4

関連記事一覧