野鳥と私たちの暮らし 第33回 世界最速の鳥 ハヤブサ
空中で獲物を捕らえる世界最速の鳥
ハヤブサは、空中で獲物を捕らえるという特異な狩をするのが特徴の猛禽です。目立つ崖の上など見通しの良い場所にとまり、獲物が通過するのを待ち、見つけると翼を閉じて上から獲物めがけて急降下します。小鳥の場合には足でつかんで空中で捕え、大型の鳥は体当たりするようにして足で蹴り、飛べなくしてから空中で捕えます。また、カモやサギ類などなどさらに大きな鳥は、水面に落としてから捕まえます。乗鞍岳でライチョウを観察中に我々の背後に隠れて飛来し、気づいて飛びたったライチョウを目の前で蹴落とすのを観察したこともありました。ハヤブサの餌のほとんどは鳥類なのです。
急降下のスピードは速く、時速320㎞を出した個体が世界最速の鳥として、ギネスブックに登録されています。実際には、時速400㎞近くのスピードを出す場合もあるとされています。ですが、ハヤブサは急降下で世界最速の鳥であって、水平飛行の場合には、時速170㎞で飛ぶハリオアマツバメが世界最速の鳥なのです。
内陸部に進出
ハヤブサは、現在は希少野生生物種に指定されている他、環境省のレッドリストでは、絶滅の危険が増大しているランクの絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されています。この鳥は、かつては海岸の崖に営巣する猛禽でした。それが近年では、内陸部の崖にも営巣するようになり、生息数が増えています。
海のない長野県では、30年ほど前までは繁殖していなかったのですが、その後各地で繁殖が確認されるようになりました。現在、私の住んでいる近くでは、長野盆地と上田盆地の境にある岩鼻の崖に20年ほど前から棲みついて、繁殖をしています。また、長野市内の県庁のすぐ近くにある朝日山の崖では、10年ほど前から繁殖が始まっています。さらに、長野盆地の北に位置する中野市の十三崖では、5・6年前から繁殖が見られるようになっています。