• 十代の地図帳
  • 青春の記憶に生きるヒントを訊くインタビュー記事

大石 芳野さん(報道写真家)

フリーでやっていけるという手ごたえはいつ頃

 10年くらいたってからですね。もちろん2、3年してからは少しずつ仕事は増えつつありましたけど。これは若いころからの持論なんですが、「どんな仕事も10年やって1人前」という哲学があるんです。

テーマである「社会問題や世界の子供たち」に目を向けられたきっかけは

 これもやはりベトナム戦争での体験がきっかけですね。とはいえ、私自身が戦場カメラマンとして特に従軍したということではないんです。どちらかと言えば、戦死者の家族の涙など戦争に翻弄される弱者達の悲劇を見るうちに「ああ、戦争っていうのはこういうことなんだ」という風に感じたんですね。

 本来、天真爛漫のはずの子供たちを大人の作り出す社会環境がいとも容易く破壊してしまうわけで、大人の責任はとても重いものなんですよ。これは幼年期、私自身も身の周りに戦後の暗さを感じていたことからも明白です。あのときの傷痍軍人たちの暗い表情が、今でもときどき鳥の影のように頭をよぎることがあります。

 その後、海外に出るわけですが、すると今度はインドネシアで日本軍の悪事を現地の人に聞かされて、とてもショックを受けるんです。「戦争ってなんだろう……」って本当に考えさせられたんですね。これら経験の蓄積が私の人生の土台になって写真のテーマの方向性を少しずつ完成させていったんです。

続きを読む
2 / 4

関連記事一覧