• 十代の地図帳
  • 青春の記憶に生きるヒントを訊くインタビュー記事

大石 芳野さん(報道写真家)

積み重ねから導き出されたものだったのですね

 私はもともと写真で人々の暮らしを写したかったんですよ。それはつまり、言語の数ほどある民族の生活や文化の多様性を被写体とすることでね。多様な文化のそれぞれをクローズアップすることで、人間のたくましさや誇りを表現したかった。そして、そういったものを破壊するのが戦争であり、恐怖政治というものだったんですね。だから「いつか被写体としたい本来の目的を撮る為に今はこれを撮る!」そんな想いが根っこにあるんです。

海外の子供たちを被写体とすることが多いですが、そこにどのような問題意識を

 現実に社会を動かしているのは常に大人です。そして、どのような場所でも戦争が起こると必ず弱い順に被害を受けていくんですね。これはどこの国でも共通している現状だと思います。だから、私が子供を撮り続けるのはつまり、「大人に拘っている」ということなんですよ。子供の瞳に映された世界の形を発信することで、逆説的に大人に訴えかけている。子供の笑顔も泣き顔も、全てが世界を反映しているんですね。

 ただ、もちろん子供は簡単には心の内側を見せてはくれません。熱心にコミュニケーションをとり続け、奇跡的に見せてくれる1枚を求めて発信を続けています。彼らの笑顔や怒りの表情を目にした大人たちが自らを投影させて、問題意識を持ってくれることを望んでひたすらにシャッターをきっているんです。

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