『中高生のための本の読み方』

 資格試験ならただテキストをやっていればいいんですが、生きているとどうしてもそうじゃない部分の学びが必要になってくる。そうなったときに、自分に必要なもの、足りないものを学ぶには、やっぱりテーマに沿った本を読むしか方法はない。そうした将来の読書環境を見据えたとき、中高は実はとても大事な準備期間なんです。

 そう考えると、読書というのが、ただのその場限りのものじゃなくて、それこそ生涯学習なんだ、というのが見えてくる。20代以降の自分の生き方に直結することだと思うし、そこが読書の一番大切な部分ですね。

現代の学びの核はどこに                                                                        

 現代は、高度情報化社会が叫ばれて久しいですが、実はインターネット上から取れる情報は、凄く少ないんです。こう言うとネット世代は反発するし、ネットにはなんでもあるって思っちゃう人も多いんですが、特にグーグル検索の上位なんかは、事実かどうか疑わしいようなサイトで埋め尽くされている。インターネットからは意外と情報を引き出せなくなっているんですよ。

 じゃあ結局、私達はどう情報を得たらいいんだろうって考えたときに、やっぱり動画は危ないんです。動画よりはまだ、本の方が正確性と信頼性は上なんですね。もちろん本の中にも危険なモノ――フェイクニュースのようなのもあるんだけど、それが嘘であると気付くにも、やっぱりそれなりに沢山の本を読みこんでなきゃいけない。何が正しくて何が間違いなのか、自分で判断する能力は今の社会でとても大切です。それをどう身に着けるかを考えたときに、まだ本の持っている力ってあるんじゃないか、そんな風に考えています。

おおはし たかゆき 作家、日本近代文学研究。東海学園大学人文学科准教授。小説に『遥かに届くきみの聲』(第一回双葉文庫ルーキー大賞)、『司書のお仕事』シリーズ、『小説 牡丹灯篭』など。研究書に『言語と思想の言説』、『小説の生存戦略』(共著)などがある。

(月刊MORGEN archives2021)

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