『世界史講師が語る教科書が教えてくれない「保守」って何?』

 一方で、国家運営も王が圧倒的な強権を持つことなく、部族長を集めての合議制でやって来た。中世に大陸のノルマンディー出身の王に征服されはしたけど、王の専制にはきっちり抵抗し、マグナカルタ(自由の大憲章)を認めさせて議会を作った。これが保守の本来の姿で、つまり保守っていうのは強力な権力や独裁者と戦うものなんです。

 そう考えたとき、日本を見ると、古事記、日本書紀の世界ってやっぱり独裁権力がないんですよ。ことあるごとに神様が集まって思案、相談する(笑い)。聖徳太子は「和を以て貴しとなす」と言ったけど、これは本当にそうで、それが日本ではずっと続いてきた。鎌倉幕府は御家人の寄り合いだったし、秀吉も家康も地方の自治を認めた。天皇も将軍も決して独裁者じゃなかったんです。で、これが日本の護るべきものなんですよ。独裁は認めない、必ず合議制なんです。そしてこれを守ろうとする思想が保守なんですね。

「保守」の最大の敵は?

 今まさに日本を脅かしてるのがグローバリズムです。現代は、国境を越えて活動する大企業や大銀行が幅を利かせていて、彼らの利益のためなら、その国独自の文化や伝統はどうでもいい、というやり口が横行している。日本で言えば、御皇室もいらないし、国境も無くして移民をバンバン入れればいい、そうすれば安い労働力が入って来るし、儲かればそれでいいじゃないか、こういった論調がグローバリズム思想です。

 これはまさに保守の天敵で、現実に今、物凄い力を持っている。なにしろお金があるから政治家やメディアの買収なんてお手の物です。結果として、言論は統制、あるいは封殺ということになる。これはもはや共産圏と同じ社会ですよ。

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